キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

経験を活かし、ゆるやかに社会とつながり続ける

  • 藤本菜月さん(一般社団法人tenten)
  • ふじもとなつき
  • 一般社団法人tenten 代表理事

1980年石川県生まれ。名古屋大学卒業後、農水省に勤務。2007年、26歳で結婚を機に退職し、夫の出身地である福島県に移住。夫の転勤に伴い南会津町や喜多方市などで暮らした。2013年に福島市に転入。パートで働き始めた一般社団法人の代表に背中を押され、2018年に任意団体を立ち上げ、2020年に法人化した。

私自身が孤独で不安いっぱいの転入女性だった

 tentenは、「仲間や地域とつながるきっかけづくり」、「暮らしの情報発信」、「多様な働き方、仕事づくり」、「県産品ギフトショップの運営」の事業を通し、福島に移住、転入した女性のサポート活動を行なっています。私自身が結婚をきっかけに移住した女性の一人です。夫と知り合ったのは東京の職場で、当時は深夜までの残業も多く、二人とも疲弊して「ふるさとに戻りたい」と希望する夫の転職を機に私も仕事を辞めてついてきました。夫の新しい職場は県内転勤があり、最初の赴任地は南会津でした。知り合いが全くいない土地に来て、孤独で不安いっぱい。それが私の福島生活のはじまりでした。
 まだSNSが普及していない頃でしたが、必死にインターネットで情報を集めたところ、南会津の暮らしを楽しんでいるご夫妻のブログを見つけました。おそるおそる連絡をとってみると、「遊びにおいで」と誘ってくれて、その方の家で地域の人と知り合い、南会津のいいところや、おいしいものを教えてもらったりして、南会津が大好きになりました。その時の経験が今の活動の原点になっています。

課題を自ら見つけ動く学生たちから受けた刺激

 南会津には3年いたのですが、その後も2〜3年ごとにある夫の転勤の度に、人とのつながりを自分で作っていかなければならないし、仕事も探しにくく人生プランが全く描けませんでした。子どもを産んだ後は、東日本大震災があり、長期間実家に戻ったこともあり、しばらくは仕事をしていなかったのですが、2番目の子どもが1歳半になったころに猛烈に仕事がしたくなりました。
 実は、24時間子どもと一緒にいるのがつらくて、子どもを保育園に預けるために仕事をしたいと思ったのです。その時に、ハローワークで見つけたのが、Bridge for Fukushimaという一般社団法人の求人でした。この団体は、震災後の緊急支援から始まり、当時は復興の担い手となる若者育成のための伴走支援を始めていて、そこで出会った高校生や大学生たちは自分達で見つけた課題に対してフットワーク軽く、多くのことを実現していて、純粋にすごいなぁと思いました。4年ほど働いているうちに、彼らに大きな刺激を受けて「私自身も移住女性のために何か活動をしたいと思っている」と代表に話したところ、活動の始め方などを教えてくれました。

ショップ「ent」に行けば、誰かに会える

 福島県に転入する女性は、毎年約25,000人いて、その45%は転勤や結婚が理由です。まず私がやりたかったのは、南会津で出会ったあの夫妻のように、みんなが集まれる居場所をつくることです。そこで2018年に任意団体として立ち上げ、「転入女性のしゃべり場」(※現在はtenten cafeとして県内各地で開催中)を開催しました。それから、福島市ならではの果物や花といった地域資源を使った「Welcomeワークショップ」を開催して、転入女性が「福島に来てよかったね」と思ってもらえるような取り組みを目指してきました。
 また、キャリアをリセットして転入したことで仕事に就くことが難しい女性も多いことから、空いた時間でできる在宅ワークの受託も始めました。昨年9月からは、「外から来た私たちがいいなと思う」視点で福島県のものを集めた「ent」というギフトショップも始めています。ここに来れば、イベントがない時にもスタッフと会うことができますし、県北地方振興局の「移住情報ステーション」としての機能も持っているので、情報発信の場所にもなっています。

経験の点と点がつながって今があるから

 福島に来た人に地域プレイヤーとして、いかに根付いてもらえるか。外から来た人が、地域とつながる事で、新しい動きが生まれることがあります。転勤などで、また転出することになっても、福島にいる間に福島を好きになってもらい関係人口として長く応援してもらえる存在になってもらいたいのです。
 私が福島に来た15年前は、絶望感でいっぱいでした。でも今となってみれば、あの時の経験があるからこそ点と点がつながって、今に至っています。自分一人ではなくて、同じような思いをもつ女性たちと一緒の方向を向いて前向きに活動できているのが、とても楽しいですし、充実しています。私も含め、スタッフは家庭優先で、無理なくできることをやるというスタンスです。
 女性が何か仕事を続けていくためには、柔軟で多様な働き方を「選べる」ことが大事ではないかなと思います。私のように、近くで子育てを助けてくれる親などの存在がないなら、男性がもっと家事育児を担える環境が必要です。やがて子どもは大きくなって、いつか親の手を離れていきます。その時までに、社会とつながり続けて無理のない範囲で助走できればいいと思います。
(2022年3月取材)

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