キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

責任を引き受けることで得られる自由を楽しんで

  • ボンド亜貴さん(Bond&Co.(ボンドアンドコー))
  • ぼんどあき
  • Bond&Co.(ボンドアンドコー)代表

1976年会津若松市生まれ。大学院卒業後、ポーランドで日本語教師やアートイベントの仕事に携わっていたが、東日本大震災を契機に帰国し実家の農業法人で働き始めた。2019年にイギリス人の夫とBond&Co.を立ち上げ、ロハスやSDGsの考えを取り入れた日本酒を販売している。

震災で父が培ってきた有機栽培の価値に気づく

 実家である「すとう農産」では、父が1970年代から合鴨を放った無農薬の稲作をしてきました。私自身は大学院でアートを学び、その後ポーランドなどで10年以上暮らしていたので、父の仕事の価値にはあまり気づいていませんでした。東日本大震災後もしばらくはポーランドにいて、父と国際電話で話す度に、だんだんと元気がなくなっていくのを感じていました。原発事故による風評被害で、有機栽培を売りにしていた実家の米は全く売れなくなっていたのです。同じ頃、ポーランド人の20代の親友が白血病で「余命1年」を告げられました。お医者さんは彼女に「治療で身体に大きな負担がかかるので、食べ物や着る物はオーガニックに変えて」とアドバイスしたそうです。その言葉をきちんと守り治療に専念したところ、彼女の白血病は1年後に寛解しました。この時、なぜ父があんなにも有機栽培にこだわっていたのかはっきりと分かり、家業の価値を守るために私にもできることがあるのではないかと思うようになったのです。そこで、2014年にふるさとに帰国し、兄が経営を引き継いでいた「すとう農産」で働き始めました。

誰かのアドバイスで共に商品を仕上げる楽しさ

 「福島」ということで「すとう農産」の米が受け入れられないならば、なにか付加価値を高めようと6次化商品の開発を始め「玄米コーヒー」、「カレーのお米」、「リゾットのお米」などを生み出してきました。アート制作と商品開発には、何もないところからものを生み出すという共通点があります。大きな違いは、アートは完成品に価値を付けますが、商品はお客さんと一緒に作り上げていくという点です。「これはこうした方がいいよ」というアドバイスを人からもらいながら、分かりやすく、よりおいしく開発していくプロセスが楽しく、クリエイティブなので、アート作品を作りたいという気持ちがそれほど強くなくなってきました。むしろ、これからは自分が得意なアート分野を強く打ち出していくことで、もっと魅力的な商品開発ができるのではないかなとも思っています。ビジネスに関して、なんでも相談できて、常に私を支えてくれる夫の存在も大きく影響しています。

夫婦で補い合えば、できることが増えるはず

 私の夫はイギリス人で、日本人には根強くある男女の役割の違いについて「なぜ?」と不思議がりますし、家事は「やって」とお願いしなくても自然に引き受けてくれます。もちろん料理が得意な男性もたくさんいますので、一概には言えませんが、食品の商品開発は、女性の得意分野です。このひと手間を省けたらいいな、こんなものがあればいいなというアイディアは常々料理をしている女性の方が浮かびやすいと思います。夫は機械いじりが得意なので、そこは全面的に任せて、私たちは互いの得意・不得意を補い合えれば、できることの幅が広がると実感しています。
 夫に限らず男性に話をすることで、自分の考えが論理的に整理されて前に進めることがあります。女性は、やりたいことがあっても「やっぱり無理だよ」と自ら折れて諦めてしまう場面が多いのですが、目的がはっきりしていれば「あとは戦うのは自分の恐怖心だけ」という側面もあります。海外のようにベビーシッターの文化があれば、子育て中の女性も活躍できると思います。

周りの声には実績で答えていくしかない

 夫と二人で父から継承した「アイガモ栽培米」を使った純米酒「ロハ酒(ろはしゅ)」などを販売するBond&Co.を立ち上げ独立しました。これまで農家の女性は、責任を持たなくていい代わりに守られる部分もあったと思います。特に農家は家父長制が根強くあり、お米の世界は米袋をかついでなんぼの男性社会でもあります。その現実はいったん受け止めた上で、実績を作って信頼を得ていくしかありません。
 責任を受け取ることによって生まれる自由もあるので、私は恐れずに楽しんで結果を出したい。「こんなに広い畑を引き受けて、どうしよう?」ではなく、「何が作れるかな」とワクワクと楽しみながら、農業を通じて「健康で持続可能なライフスタイル」を実践していこうと思っています。今後は土づくりから多くの人と共有できる民泊やどぶろくづくりにも挑戦する予定です。(2022年3月取材)

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