キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

「いち農家」の女性が起業・国際活動 いろんなことに疑問をもち、多くの人と関わることで活躍の場を広げています。

  • 鈴木二三子さん(一般財団法人国際女性教育振興会、有限会社グリーンタフ工業)
  • すずきふみこ
  • 一般財団法人国際女性教育振興会福島県支部長 有限会社グリーンタフ工業代表

1945年西会津町生まれ。33年前に微生物を使った土壌改良剤を扱う㈲グリーンタフ工業を起業。現在は会社の業務をほぼ長男に任せ、いち農家として、また農産物加工者として活動中。福島県女性団体連絡協議会会長、一般社団法人国際女性教育振興会福島県支部長も務めている。

好きだから継いだ西会津町の農家

 農家の暮らしが好きだったので、なんの疑問も持たずに家業を継いだ「跡取り娘」です。築150年になる家を手入れしながら住んでいて、自分が産まれた部屋で寝起きしています。きっと最期もその部屋かな?となんとなく思っています。「跡取り」なので、家のなかでは大切にされてきたと思うのですが、一歩外に出れば女性であるがゆえの不利益を被ることはありました。例えば、若い頃に「若者育成資金」に申し込んだとき、後から申し込んだ男性が優先されたことを知りました。当時はそういうことが当たり前にあったのです。
 春は小川のせせらぎを聞いて種まきし、ジャガイモの芽が出た時期で次の季節を予想するような自然と共にある暮らしをしてきました。33年前に起業したときは、自分自身が一番びっくりしたくらいです。農家の仕事で「少しでも楽をしたい」という気持ちがあったので、農業関係の勉強会にはよく顔を出していました。そのうちに、全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)で研究開発を担っている方たちと接点をもつようになり、いろんな話をするようになっていきました。

「女の人が何言っているんだか」

 まだ若かった私は、研究者に素朴な疑問をぶつけました。「米は、ご飯にもお酒にもなる。発酵させてお酒になると、酔っぱらうし人に与える影響が大きくなる。だとしたら、米を作る土壌の部分で発酵が起きたら、どんなことになってしまうんだろう」。
 そんなことを話していたら、いろんな文献を送ってくれるようになり、微生物を活性化させる土壌づくりを全農と一緒に研究するようになりました。実践すると、うまくいったことがうれしくて、その結果を農家のグループに話しているうちに、「うちの分も頼む」なんて言われて面白がって人の分もやっているうちに起業することになったのです。
 大きな企業と提携するようになり、仕事はすぐに軌道に乗りました。取引先のなかには、私が代表者だというと、あからさまに「女の人が何を言っているんだか」という態度をとる人もいました。そんな時には、こちらから「もう結構です」と取引をお断りしました。男性とか女性とかではなく、ちゃんと研究の内容を見てもらいたかったからです。それだけ内容には自信がありましたし、もちろん尊重してくれる人も少なくありませんでした。

先入観をなくすとビジネスチャンスが

 「男だから、女だから」に限らず、いろんな先入観をなくしていくと、面白い発見があるのです。私は、ずっと自分を西会津町の「いち農家」だと思っているのですが、そんな私の話を面白がってくれる人もいます。たまたま、研究者の人たちがうちに来ているときに、「雨上がりになると泡がぶくぶく出てくる岩がある」という話をしたら、その岩をぜひサンプリングしたいといわれて、東京の研究所に送ったことがあります。それがきっかけとなり製品化されたものもあります。製品化される際には「そちらで事業化しませんか?」と何度も確認されましたが、これは規模が大きくなるので怖じ気づいてしまい(笑)手を出せませんでした。今ではしかるべき企業が工場を設けて製品化しロングセラーになっています。

お天気が気になって「海外派遣事業」へ

 国際女性教育振興会に参加することになったのは、ライフワークである「お天気」の研究がきっかけでした。農作業を効率的にこなすために、20歳代後半から自分なりに天気の研究を続けてきたところ、おもしろい法則を見つけたのです。モスクワの天気は、10日後の西会津の天気に正比例しています。モスクワで雪がふったら、10日後に会津で雪が降るのです。「いつかモスクワに行きたい」と夢見ていましたが、社会主義国家の時代にはなかなか旅行できませんでした。そんなとき、県の広報で「女性のための海外派遣事業」が開催され、目的地がモスクワであることを知りました。「女性のための」事業であれば、若い頃のような思いをしなくて済むだろうと応募しました。
 その後、参加者たちで組織する国際女性教育振興会に参加。福島県支部長として「地域社会に国際的視野をもつ人材育成と男女共同参画社会構築」を目的に活動しています。震災後、平成27年には海外の若者たちを福島に招待する「交流促進事業」を行っています。

できることから少しずつ進もう

 いま一緒に暮らしている孫二人も女の子です。少子高齢化の進む時代に、「男だから、女だから」と区別していたら立ち行かなくなることも増えてくるでしょう。地域のお祭りでも、伝統的に男の子しか上がることができなかった太鼓櫓に、みんなの了解を得て孫達を登らせました。正直なところ、最初に何かを変えることは勇気がいるものです。次の年からは、他の女の子たちも櫓にのぼり、元気に太鼓をたたくようになりました。少しずつでも身の回りからできることに取り組むことで、世の中は変わっていくのだと思います。

 人生を面白くするには、いろんなことに疑問をもつことが大切だと思います。疑問をそのままにせず、自分なりに調べたりしながらプラスに変えられる方法がないか考えるのです。例えば、家事をひとつとっても、「もっと楽にできる方法はないか」と工夫しているうちに新たなアイディアが生まれて、商品化されたりすることが実際にあるのですから。
私がいろいろとやっていることに対して家族は、協力的というよりは「勝手にやれば?」と見守るような関わり方でした。それでも、ほんのちょっと楽しくなって、少しでも収入増につながれば、男性陣も協力的になってくれるようです。そういう話はあちこちで聞きます。共有する部分が増えれば、家の中も明るくなってきます。まずは「疑問をプラスに変えること」。それが、私からみんなに伝えたいメッセージです。(2015年12月取材)

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