キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

「県外から来た人」の目線で地域の魅力を掘り起こし、子どもたちの未来を拓く

  • 小林 味愛さん(株式会社陽と人)
  • こばやしみあい
  • 株式会社 陽と人 代表取締役

1987年東京都立川市生まれ。慶応義塾大学を卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向。その後、株式会社日本総合研究所で地域活性化などのコンサルティングを経験し、2017年に国見町で「農産物の流通・6次化商品開発・ 地域づくり」を行う会社を立ち上げた。現在0歳児を育てながら東京と福島を行き来する。

株式会社 陽と人 https://hito-bito.jp/

女性だから気づいた規格外の果物にある潜在ニーズ

 当社の事業は3つあります。一つが果物の「流通事業」です。これまでハネモノとよばれる規格外の果物は流通に乗りませんでしたが、実は首都圏の消費者には相当なニーズがあります。それを農家から取りまとめて店に卸す仕組みをつくりました。催事で販売もしています。福島県では「桃は大きいほど価値がある」と聞くことがあるのですが、例えば一人暮らしの女性の場合、果物は一度に食べ切れる大きさのものが欲しいという方や、自分で食べるなら見た目は気にしないのでハネモノで充分という方も多いと思います。「県外から来た人」である私ならではの目線で、気づいたことを事業化しています。
 二つ目の事業が農作物加工品の「企画販売」です。今年の秋、コスメメーカーと2年間かけて準備をしてきた化粧品を発表します。原料には柿を使いました。メイドインジャパン、かつ安心・安全なオーガニック化粧品です。単なる化粧品ではなく、「女性が自分の意志で選んで、未来をつくっていく」をコンセプトとしたアイテムにしていくつもりです。
 事業の三つ目が地域のプロデュースです。自治体とコラボしながら、都会の学生達に県北地域の現状を見てもらい、課題の解決方法を一緒に考えるなど、いろいろな取り組みをしています。

「二人で子育てするために」夫が1年間育休取得

 よく「なぜ国見町で起業したの?」と聞かれますが、単純に「福島県が好きだから」です。おいしい食べ物や、人のあたたかさ、豊かな自然などが気に入って、以前から頻繁に福島県に来ていました。そんな県内でも県北地域は「突出した何か」が表に出ていない印象を受けました。そこで、まだ知られていない魅力を広く発信する仕事をしたいと思いました。会社の主な拠点は国見町ですが、自宅は東京です。首都圏でモノを売っているのに、ずっと福島県にいると首都圏の感覚が分からなくなってしまいそうなので、あえて拠点を二つにしています。
 現在は、新幹線で福島と東京を行き来して、滞在期間が長くなる時には夫と子どもも一緒に福島に来ることもあります。夫は国家公務員時代の同期で、私より先に辞めて現在は保育園の運営に携わっています。子どもができた時に「せっかくだから、夫婦二人で子育てしたいね」と話し合い、彼が1年間育休を取得することになりました。私自身も子育てはしていますが、仕事柄彼の方が詳しいので、離乳食や子育て支援の施設についてはいろいろと教えてもらっています。

農家の人たちの豊かな生き方にふれ価値観が変わった

 東京は子どもの遊び場や子育て支援が充実していたり、子連れ歓迎のカフェがあったり、教育の機会も数多くあります。そんな子育てしやすい環境がある一方で、いまだに「女性が仕事をしながら子育てをする」ことは難しい現実があると感じています。妊娠中に混雑した電車に乗るのがとても負担であるということや、保育園に入りにくいことなどです。私は起業するまで圧倒的に男性が多い職場で深夜まで働いていました。その頃は身体を大事にしようとか、子どもを育てたいと考える心のゆとりは一切ありませんでした。若かったので、認められたくて長時間労働で働く男性上司の価値観に合わせようと躍起になっていたと思います。振り返ると、相当無理をして周りに合わせていました。
 起業して農家さんをはじめ色々な人と話をするようになり、これまで自分が「絶対」だと思っていた価値観が変わりました。「首都圏の大企業」にはない豊かな生き方を福島で感じ取る場面が増えてきたタイミングに子どもを授かりました。天候に影響されたり、農家の方々は大変なことも多いのですが、家族みんなが本当に子どもをかわいがって育てています。実のところ、それまでの私は子どもをかわいいと思ったことがありませんでした。それなのに、出産して自分の子どもだけではなくて、周りの子どもたち全てがかわいいと思えるようになり、自分の心境の変化に驚きました。

少子高齢化が進む今だから、10年後を見据えて動く

 常に先を見て、10年後を見据え、後世に託していく地域をつくる。福島県の基幹産業である「農業」を持続可能な産業にするための手段として、地域産業を育てることにより、地域の子どもたち誰もが自分の人生を諦めずに「選択」できるよう、地域の教育分野の事業に再投資していく。それが会社のビジョンです。その実現のためにこれからも改善・改良しながら事業を拡大していく予定です。
 つまり、地域でしっかり稼げる仕組みをつくり、その資金を教育分野にまわしていくということです。今年の秋には、国見町の若者4人で立ち上げた「家守舎桃ノ音」という別組織で、社会教育の場や子どもたちの遊び場もある複合施設「アカリ」をJR藤田駅前にオープンします。「陽と人」は、福島県と都会をつなぐ会社で、「家守舎桃ノ音」は、国見町のまちづくりを行う会社です。
 少子高齢化でこれから税収は減っていく一方。行政に頼るのではなく自分たちで出来ることに真剣に取り組んでいかないと地域は良くなっていきません。温かく、子育てをしながら仕事をすることを歓迎してくれる福島の人たちと一緒に、地域の子どもたちの未来につながる「持続可能な地域循環経済」をここ福島からつくりあげていきたいと思います。(2019年7月取材)

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