キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

メイドインジャパンのムスリムファッションで女性を輝かせる

  • 名和 淳子さん(合同会社 WATASI JAPAN)
  • なわじゅんこ
  • 合同会社 WATASI JAPAN 代表

1975年愛知県生まれ、横浜市で育つ。東京農業大学農学部国際農業開発学科在学中の1996年、農業実習のためマレーシアのクランタン州のジャングルで1年間過ごした。大学卒業後は、栃木県内の農業関連企業に入社し、25歳で結婚。出産・育児のために退職後、2016年2月に起業。

日本で誰も取り組んでいないビジネスを探して

 WATASI JAPANは、イスラム教徒の女性が頭に被る「ヒジャブ」や中東の女性が身につける「アバヤ」などのムスリムファッションを日本の着物を使って縫製している会社です。私自身がイスラム教徒ではありませんので、「なぜ、この仕事を始めたの?」と本当によく聞かれます。
 5年ほど前、私は起業を目指して「まだ誰も取り組んでいないビジネス」を探していました。「自分に何か他の人とは違う特別な経験がないか」と考えた時に、思い出したのが学生時代、マレーシアのクランタン州で農業実習をしていたことです。クランタン州はタイの国境近くにあり、イスラムの戒律が非常に厳しいところです。1日5回は礼拝を呼びかけるアザーンが拡声器から流れてきて、一緒に農場で働いていた女性たちはみんな頭にヒジャブを被っていました。
 ビジネスを意識し始め改めて調べてみると、世界の4人に1人はイスラム教徒で、将来的には3人に1人になっていくであろう巨大市場ということが分かりました。しかも、日本でヒジャブを作っている会社はまだなく「これはビジネスとしていけるかもしれない」とひらめいたのです。

育児中の優秀な女性たちと一緒に仕事をしたい

 起業をしたのは、子育て世代が活躍できる会社を立ち上げたかったからです。私は大学卒業後、農業関連の企業で14年間働いて管理職も務めたのですが、男性中心の会社では育児と仕事の両立が難しくて、やむなく退社した経緯がありました。
 育児に専念していた4年間、ママ友として出会った女性たちには、人事部門を経験した私から見ても「ぜひ雇いたい」と思う優秀な人材がたくさんいました。縫製業であれば、能力のある女性たちが、子育てと両立しながら時間をやりくりして働くことができると思ったのです。
 商品開発はイスラム教徒の女性の意見を取り入れました。海外で売っているヒジャブは非常に安く、日本の製品にそれなりの金額を払うのであれば、「日本らしい見た目でなければ意味がない」と言われました。そこでたどり着いたのが、古い着物、特に黒留袖のリメイクでした。

黒留袖には世界の女性に共通する思いが描かれている

 結婚式で新郎新婦の親族が身にまとう黒留袖には、子孫の幸せと繁栄を祈る松竹梅などのおめでたい模様が描かれています。健康・長寿や「子どもの幸せを願う」思いは、世界中の女性に共通していることなので、そのストーリー性は商品の大きな付加価値になります。
 一方、日本の着物文化は衰退の一途にあります。着物は身にまとってこそ美しさが引き出されるので、タンスの中に眠っている着物を再生させたいと思いました。体のラインを見せないシルエットが特徴の「アバヤ」は黒色が多く用いられるので、黒留袖は最適な素材なのです。
 着物は、中古着物の販売会社から仕入れることもありますが、「ぜひ使ってほしい」と持ち主から直接譲り受けることもあります。私たちは、1枚1枚をほどいてきれいに洗浄しアイロンをかけ、裁断し縫製して製品に仕上げます。全てが1点もの。世界に一つしかありません。形を変えて表舞台に戻ってきた着物は、JETRO主催のキャラバン隊で行なった現地のプレゼンなどでイスラム教徒の女性たちから良い反応がありました。

地元の高度な縫製の技術をつないで本格的な事業化を

 これらの製品は、東京にあるモスク「東京ジャーミイ」などで販売しています。ターゲットは、世界中のモスクを訪ねて旅するインバウンドのイスラム教徒です。また、自社のWebサイトで通信販売も行なっており、イスラム圏に行く日本人がお土産に購入してくれます。近頃は、日本の商社やメーカーと連携して中東で販売するムスリムファッションの商品開発を始めています。
 これまで裁断や縫製は、育児中の女性に内職で依頼していたのですが、生産量を確保して納期を明確にするために、最近は白河市内の縫製工場でミシンなどの設備を貸してもらいながら70代の女性がこれまで培ってきた高度な縫製技術を私たち子育て世代が教えてもらっているところです。このつながりで、私たちが「これぞメイドインジャパン」の技を掴むことができたら、本格的に事業として成功させることができるはずです。海外生産によって消えかけていた地域の縫製産業を元気にする一助にもなればとも思っています。

文化を理解し合う大切さを子どもたちにも伝える

 イスラム教徒の女性に話を聞くと、日本でヒジャブを被っていると「奇異の目で見られることが多い」と話します。当社にインドネシアから実習に来ていた20代の子と長い時間を一緒に過ごした経験からも、彼女たちは戒律のために「つけさせられている」のではなく「ファッションとして楽しみたい」とヒジャブを被っていることがよく分かりました。そして、日本人の私たちがヒジャブを作って「ムスリムファッションに関心をもってくれるのはうれしい」と言うのです。
 実際に話を聞いて見て経験しなければわからないことはたくさんあります。偏見が生まれるのは「知らない」から。自分で確かめたことを、どう切り取り紹介するかでお互いの関係性が変わるのです。子育て世代の私たちが、WATASI JAPAN を通して相互の文化をきちんと理解しあうことができれば、これからを担う子供たちの将来にもよい影響があるはずだと思います。
(2020年2月取材)

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