質問：建女会発足の経緯について教えてください。

　多発する自然災害やインフラの老朽化など、地域の安全を守るために建設業は重要な役割を担っています。一方、業界全体の高齢化が著しく進んでおり、将来の担い手の確保が喫緊の課題です。建設業は男性社会と思われがちですが、建女会の幹事のように活躍している女性も少なくありません。女性目線で様々な課題を解決していこうと、県内８地域から幹事が集まり活動しています。

質問：具体的にはどのような活動をしているのですか？

　これまでに、県内の建設関係学科がある高校に赴き「ふくしまけんせつ・どぼく女子座談会」にアドバイザーとして参加したり、「危険体感実技研修」「女性環境パトロール体験」で安全管理や環境整備について学ぶ機会を設けてきました。最近、「ふくしま建女会」のロゴマークを使ったブルゾンやクリアファイルが出来たので、これらを活用しながら業界のＰＲをしていきます。

質問：建設業界に女性技術者は増えているのでしょうか？

　県内の女性建設業就業者数は増加傾向にあります。その一方で、福島県建設業協会の会員実態調査によると女性技術者は減少傾向にあり、2018年度には100人を切っています。設計などの専門職は比較的女性も入職しやすい傾向にありますが、土木や建築の総合職は覚えることが多く、現場から戻った後も書類作成等で勤務時間が長くなってしまうので女性が増えない印象があります。

質問：専門職と総合職によって状況が違うということですね。

　会津には、４人の女性技術者が活躍する建設会社があります。少数派ではありますが、家庭を持っても働き続けたい女性が「自分が好きな仕事を長く続けたい」と建設業を選ぶこともあるのです。専門的な勉強をしてから入職する仕事なので、やる気のある女性技術者が多いです。

質問：どんな女性が建設業界に向いているのでしょうか。

　男女を問わずコミュニケーションが上手な人です。現場にいる職人さんたちは自分の父親よりも年上の人もいます。その方たちに意見をしっかり伝えられないと仕事がまわっていきません。例えば、男性からガンっと大きな声が返ってきたとしても、前向きに気持ちを切り替えることができれば、やがて仕事ぶりを認めてもらえることが多いです。最初は戸惑っても職人さんと関わっていくうちに徐々に活発になっていくのではないかと感じます。また機械化や技術の進歩により「体力勝負」ではなくなってきていますので、女性が活躍できる場面がどんどん増えてきています。

質問：女性目線が入ることで建設業界にはどんなメリットがありますか？

　個人差はありますが、一般的に女性は気配りが得意とされるので、職場や現場の環境整備などにも女性目線を活かすことができると思います。また、女性が入ることで現場の雰囲気が明るくなるという声もあります。

質問：どうすれば女性も長く建設業界で働き続けることができるのでしょうか。

　法定の産休・育休は取得できますが、働き続けるためには各職場での理解と協力が必要です。「必要とされる存在になりたい」と努力を重ねる女性技術者が多く、現場を抱えた責任感から「休みにくい」という人もいますので、人材確保や代わりの人を配置できる体制づくりが必要です。これは建設業だけではなく他の業種にも同様にある課題だと思います。産休や育休を取得する人が増えれば、経験を通して後輩にアドバイスすることもできます。また、様々な必要書類の作成に多くの時間がかかっているのが現状なので、何か効率化できる仕組みがあればいいと思います。

質問：建女会としてネットワークを構築することでどんな効果がありそうですか？

　他社の女性の方々と交流する機会がこれまでなかったので、色々な話や考えを聞くことで、共感する部分も多く勉強になっています。様々な話を聞くことによって「もっと頑張らなくては」「この仕事をしていて良かった」と仕事に前向きな気持ちになりましたという声もあります。

質問：建設業界を目指す人に、建女会からメッセージをお願いします。

　建設業最大の魅力は、建造物が完成した時の達成感です。「お客様が喜んでくれている姿を見ると、つらかったことも忘れてしまう」と全ての幹事が言います。ここ数年、業界をあげて女性が働きやすい環境づくりに動いていますので、少しでも建設業に興味があるならば挑戦してほしいと思います。また、男女問わず若い人たちが建設業に関心を持ってくれるように、建女会の活動を通じてイメージアップに努めていきます。（2019年９月取材）