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キラリと光るキラっ人さん

ふくしま女性活躍推進シンポジウム
男性育休が女性活躍推進にもたらす価値
~積水ハウスのダイバーシティ推進の取組から~

開催日時
令和4年9月8日(木) 14:00~15:30
開催場所
福島県男女共生センター 1F研修ホール
参加者数
240名(オンライン参加を含む)

講演会男性育休が女性活躍推進にもたらす価値
~積水ハウスのダイバーシティ推進の取組から~

講師

積水ハウス株式会社
執行役員
ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部長
 山田実和氏

内堀福島県知事が感じた違和感
なぜ「女性活躍」が必要なのか?

 今日のメインテーマである「女性活躍」という言葉に、私は違和感があります。なぜ、女性だけに「活躍」という言葉を付けなければいけないのか。裏を返せば、今、日本や福島県では、女性が十分に活躍できていないということだと思います。実は、福島県のジェンダーギャップ指数は、都道府県の偏差値で見ると43であり、平均値の50を下回っています。こうした状況にあるため、「女性活躍」という言葉が必要になっているのではないでしょうか。将来、女性の皆さんが当たり前のように活躍し、性別を問わず誰もが活躍できる福島県にしていくために、まず今日、その一歩を踏み出したいと思います。

きっかけは、社長がスウェーデンで見た
幸せそうな「ラテダット」

 当社は2020年から「わが家」を世界一幸せな場所にするというビジョンを掲げています。その実現に向けたサブビジョンの一つが「ESG経営のリーディングカンパニー」です。住宅をお引き渡しした後、何十年もお付き合いを続けていくためには、持続可能な企業でなければなりません。「女性活躍の推進」「多様な人財の活躍」「多様な働き方推進」をダイバーシティ推進方針の 3 つの柱とし、従業員と企業がともに持続可能な成長を実践できる環境や仕組みづくりに取り組んでいます。本日ご紹介します男性育児休業の取得促進を始めたのは2018年。きっかけは、社長がスウェーデンで目にした光景です。街なかでベビーカーを押している親のほとんどが父親で、スウェーデンではカフェでラテを飲みながら育児をする父親を「ラテ・ダッド」と呼ぶそうです。その姿が幸せそうで、「ぜひ当社でも推進したい」と帰国後2ヶ月で、「男性育児休業一ヶ月以上の完全取得」を宣言しました。制度の特徴として、最初の1ヶ月は有休、さらに家庭や仕事の都合に合わせ、最大4分割での取得が可能です。

家事・育児のシェアで、
家族の未来像に良い影響がある

 まずは意識改革として、対象者本人とその上司、約1,900名が参加するフォーラムを開催。社長の強力なトップマネジメントのもと、「男性育休は従業員と家族の幸せにつながっている。これは会社の経営戦略として実践していく」と本気度を社員に伝えました。さらに、ファザーリング・ジャパンの安藤代表から男性育休取得の意義やメリットなどをわかりやすくご講演いただきました。妻が仕事を持つ持たないに関わらず家事育児をシェアすることは、家族の未来像に良い影響を与えること。また上司にとっても、今後起こり得る介護やメンバーの病気・けが等による突然の休業への準備にもなると紹介していただきました。

男性育休の完全取得のために
会社が準備してきたこと

 続いてツールをご紹介します。まずは『家族ミーティングシート』です。いつ、なぜ育児休業を取得したいのか。これまでの育児家事はどんな役割分担だったのか、育休中だけでなく、育休終了後の育児家事の役割を家族で細かく話し合うためのシートです。これはホームページで公開しており、どなたでも使って頂けます。また、国家公務員の育休制度が2020年に始まった時にも参考にしていただきました。
 職場のコミュニケーションツールは、『取得計画書』です。いわゆる仕事の引き継ぎの計画書で、休業開始日の2ヶ月ほど前に職場内で話し合い、上司の承認はもちろん、パートナーにも署名をもらいます。これを休業開始日の一ヶ月前までに提出することで、仕事の心配なく育児に専念する準備ができます。
 また、子どもが2歳の誕生日を過ぎても取得計画書が申請されていない場合、計画をうながすアラートが本人と総務担当者に毎月表示され、計画書を提出するまで続きます。

助け合いや仕事への誇りなど、
幸せのサイクルが見えてきた

 男性育児休業が浸透してくると、職場で仕事の見直しや助け合いの風土が醸成されました。育休以外の有休も取得しやすくなり、ワークライフバランスが推進されたという声もあります。また長期の休みに向けて業務の棚卸しができ、業務を若手に任せることで人材育成につながったとも聞きます。
 男性育休は、特に学生さんのインターンシップでも具体的な話を聞きたいと関心を寄せてくれました。また営業職は「お客様に迷惑がかかるのでは?」と心配していましたが、「育休を取る」とお客さまに伝えると「家族を大切にしている人に私の家を任せたい」と言っていただけて、非常に誇りを持って仕事に取り組めるようになったといったエピソードもあります。

意識調査「男性育休白書」に
目に見える変化が

 「制度がある」と伝えるより、取得した本人が「取って良かった」と話し、いきいきとモチベーション高く仕事に取り組んでいる姿を見ることが、取得者を増やしていくことにつながります。そういう社員をどんどん増やしていくことが職場に好影響を与えるのではないかと思います。
 積水ハウスでは、4年前に9月19日を「育休を考える日」として記念日制定し、この時期に毎年「男性育休白書」を発表しています。昨年のデータでは、特に若い世代で家事育児をすることに幸せを感じたり、積極的だったりという変化も見られています。都道府県の育児家事の実態をアンケートで取得したランキングなどもございますので、機会があればご覧ください。

男性育休は、中長期的に見ると
女性活躍や少子化対策にもつながる

 「男性育休の取得促進がもたらす価値」をご紹介します。当社では「わが家」を世界一幸せな場所にするというグローバルビジョンをかかげておりますので、お客さまや社会に幸せを提供するためにはまずは従業員が幸せでなくてはならないということで、男性育休の取得促進が始まりました。スライドにあるような幸せのサイクルを続けていくことで、中長期的には女性活躍、また少子化対策、そしてこれから誰もが経験する介護の備えなどにもつながると考えています。

 「家族ミーティングシート」「男性育休白書」はこちらから閲覧・ダウンロード可能です。

トークセッション女性活躍推進におけるマネジメントの役割

(写真左より)
【進行】
 福島県知事 内堀雅雄

【登壇者】
 積水ハウス株式会社
 執行役員
 ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部長 山田実和氏

 福島トヨペット株式会社 代表取締役副社長 佐藤藍子氏

 福浜大一建設株式会社 取締役総務部長 遠藤順一氏

個に寄り添い最大のチーム力を
発揮できるマネジメントを

福島トヨペット株式会社 代表取締役副社長
佐藤藍子氏

 弊社は、社員数が約600名、男性が500名程度、女性が100名程度です。私が2014年に入社した当時は、圧倒的な男性社会で女性はサブ的な存在でした。もっと活躍できるのに女性が自らセーブしてしまったり、能力があっても自覚していない女性がいました。特に店長は、営業を経験してきた男性がなる暗黙の了解があり、まずは見過ごされてきた女性の昇格をテーブルに乗せることから始めました。今年は、営業経験がない事務職の女性が店長になっています。
 男らしさ、女らしさというとらえ方は過去のものです。得意な人が得意なことをやるのが自然で、我が家も夫の方が家事を多く担っています。一人ひとりの持てる力、置かれている状況は性別だけでは区別できませんので、個を尊重し、個の集団が最大のチーム力を発揮できる会社にしたいと思っています。また、人間関係が良くないと育休に限らず突然の休業に対応できないので、日頃からチームワークをよくすることを心がけています。一人ひとりの気持ちや状況、能力に、どれだけ寄り添いマネジメントしていけるかが、私自身の課題です。また、男性育休の取得日数が多くはないので、これから伸ばしたいと思います。今、目指しているのは、県外の人も「ぜひここで働きたい」と入社する会社です。福島県をもっと元気にしていくために、他社のみなさんとも知恵を出し合い一緒に頑張っていきたいと思います。

社会に新たな価値をもたらす男性育休
ぜひ未来を担う若者に経験させて

福浜大一建設株式会社 取締役総務部長
遠藤順一氏

 当社は社員96名のうち80名が男性で若い男性が多い建設業です。「いい会社には、いい人材が集まってくる」という社長の考えのもとで、男性育休を進めてきました。現在は、最低2週間、対象者100%の取得を継続し、新聞やテレビなどの取材を多く受けています。男性育休が当社に定着した要因の一つが各セクションの責任者の協力体制、チームワークです。今、建設業全体が働き方改革を進めています。どうすれば残業を減らせるか。どうすれば休みを取れるか。一人ひとりが考えることで、将来的に建設業が魅力的な業界になっていく一端を担えるのではないかと期待しています。
 こんなエピソードがあります。2年ほど前、既婚の女性社員に残業をお願いしたところ、予定していた時間をオーバーしてしまいました。彼女は「食事の支度をしなくちゃ」と急いで帰ったのですが、すでにパートナーが食事を用意してくれていたそうで、それを翌朝、私にうれしそうに教えてくれました。これは、女性社員の家族の勤務先が、目に見えない利益を当社に運んでくれたということでもあり、社会が支えあっているのだと実感しました。
 自分自身が父親になった頃は、育休取得は思いもよらないことでした。しかし、私と同じ時代を生きてきた管理職のみなさんに「自分ができなかった貴重な体験を未来を担う若者に経験させて」と伝えたい。男性育休の経験は、会社だけでなく、社会全体にも新しい価値をもたらすと思います。

「配慮はするが、遠慮はしない」

積水ハウス株式会社
執行役員
ESG経営推進本部 ダイバーシティ推進部長

山田実和氏

 当社が2021年に行った「男性育休白書」の中で「男性の育休取得に対する賛否」のアンケートを行ったところ、女性部長の13%は「賛成しない」と回答しています。いわゆるアンコンシャスバイアスで、女性側にも「こうあるべき」という無意識の偏見があるかもしれません。女性自身が思い込みを外し様々なチャレンジをすることも大事です。女性は男性より長期間のライフイベントがあります。組織側としては、育児中の女性に対しても「配慮はするが、遠慮はしない」と仕事の役割を与える。それも早い段階で面白い仕事をさせる必要があると思います。身近に多様なロールモデルを作って、現在あるリーダー像だけではなく、さまざまな働き方や個性を活かした多様なロールモデルを増やしていくことで、チーム力はより高まってくると考えます。
 人手不足、働き方改革の解決策の一つが家族と職場とのコミュニケーションです。家族の協力がないと、働き方が見直せませんので、ライフもワークも含めたビジョンを、家族と職場で話し合う事が大切だと思います。さらに管理職の働き方を変えないと、若手も変わりません。私自身も含めて、働き方の改善が必要なのかなと思います。いずれにしても、それぞれの企業や団体、個人にふさわしい取り組みがあると思います。

「当たり前の基準を変える」
そのための一歩を踏み出そう

福島県知事
内堀雅雄

 知事である私自身が、2016年に『イクボス宣言』をしました。『イクボス宣言』には、育児だけでなく介護の概念も含まれており、育児ができる職場というのは、急な病気や介護にも対応できる職場です。宣言した当時の県庁は、男性の育児休業取得率が数%でしたが、対象となる職員とその上司に対する『イクボス面談』を続けていく中で、育休取得率は、令和2年度が30%、直近のデータである令和3年度は59%まで上がってきました。つい2、3年前までは、半数以上の男性職員が育休を取っていませんでしたが、昨年度は6割の職員が取っています。「育休を取るのは珍しいね」から、「何で育休を取らないの」と育休を取らないことが珍しくなる。この「当たり前の基準」を変えることが、すごく大事です。
 私は、令和7年度までに男性職員の育休取得率を100%にすることを目標に掲げています。昨年度の平均取得日数は1.6か月ですが、この日数も徐々に延ばしながら、「男性職員が育休を取るのは当たり前」という県庁文化にしていきたいと思います。
 今日、このステージに立っておられる方は、正にトップランナーです。皆さんが同じことを一度にできるわけではありません。初めの一歩を踏み出すことが大事であり、そのために何ができるかを考えることが大切です。
 一歩を踏み出せば、見えてくる世界が変わります。そして、皆さんが一歩を踏み出すことを続ければ、必ず県全体を変えることができます。女性が活躍できる社会は、男性も活躍できる社会であり、さらに、子どもたちも笑顔になれる社会です。そういう福島が絶対につくれるという思いを、皆さんと共有しつつ、このシンポジウムを締めたいと思います。

オンライン参加者向け配信動画

【参加者からの声】

●具体例が多く、実践につなげやすいと感じた。

●他の企業の取組状況や課題を認識できた。

●県内企業の方のお話が身近に感じられて良かった。

●メッセージがしっかりとわかり易く、今後の取組のキッカケになりそう。

●各企業さんの取組み事例をお聞きし、自社の今後の運営に役立てる参考になった。

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