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カジダン

スペシャル対談

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カジダンと働き方改革

夫も妻も家事や育児をこなすことで、女性は仕事をしやすくなってきますよね?

横田さん
そう思いますよ。だって、家に帰って来た時に、洗濯物とお風呂洗いは夫がやってくれている状態なら、妻の家事や育児の仕事量が減りますから。例えば、夫は毎日帰宅が遅くて、保育園のお迎えを妻がやっているのだとしたら、たまには夫が迎えに行くといいのです。時間に制約をつけて働いているのは圧倒的に女性ですから。お迎えの時間を気にせずに、たまにはママが家に直帰できると、それだけで気持ちに余裕が生まれるはずです。でも、これって多くのパパの日常です。ごはん作らなくてもいいし、風呂洗わなくていいし、洗濯物をやらなくてよくて、「仕事で今日は遅くなる」、「メシは家で食う」と妻に電話を1本入れればいいんだから。
竹下さん
夫に保育園のお迎えに行ってもらえるだけで、全然、段取りが違いますよね。お母さんは先に家に帰って、まず家に着いたら電気を点けて、寒ければ部屋を温めて、洗濯物を取り込んでご飯を作っておく。そこに帰ってくるってなると、やっぱり夫だって、暖かくてご飯がすぐに食べられてうれしいじゃないですか。電気が点いている家に帰るのって、やっぱり気持ちが違いますよね。保育園から帰ってきても、お母さんはホッとする間もなく動かないといけないのです。
横田さん
電気が点いていて、パパと子どもが笑っていて「ママ帰ってきたぞ」って言って、子どもが玄関に「ママー」って迎えにいく、いつもとは逆パターン。「パパ、お帰り〜」というのではなくて「ママー」って行くパターン。これはママの精神的にはいいですよね?

それを現実的にするには、長時間労働を減らしていく必要がありますね。

横田さん
そうです。働き方を変えるということですね。「働き方改革」の必要性につながっていきます。そのためには「イクボス」などの取り組みが必要なんです。
今、管理職になっている50歳代からの世代の人たちの頃は「カジダン」なんて言葉もなかったし、仕事一筋で外で稼いで家族を養う「大黒柱」という言葉でがんばってきました。でも、その価値観を部下に押し付けてはいけないのです。「毎日遅くまで仕事でがんばってノルマを達成して、転勤もして、成果を上げたから今のオレがいるんだぜ」と言っても、もう今部下の人たちは「へぇ〜」みたいな反応で終わるということですよ。「素晴らしいです。僕も家に帰らずに働いて部長みたいになりたいです!」というような20〜30歳代の男性部下は、今ほぼいないはずです。

女性が自分の人生を輝かせるためにも、パートナーである男性の協力が必要不可欠なわけですよね?

竹下さん
そうですね。あとは女性も「私はママだからできない」「私は妻だからできない」という思い込みを外すことですね。女性の方の話を聞いていると「いやぁ、私なんかムリです」と言う方が多くて、「ムリもなにも、やってみてもいないのに、最初にムリって決めつけていること自体がダメなんじゃない?」とお話をするんですけれども。
横田さん
離婚率の増加も、そういう理由があるのかもしれないですね。ワーキングマザーが増えて、それなりの給料を得るようになっている。もしシングルになったとしても、子どもを育てるために金銭的な問題がなければ、喧嘩ばっかりして子どもが情緒不安定になるくらいだったら、離婚するという選択肢もあるとは思います。
竹下さん
私が離婚する時もそうでした。家を飛び出し実家に帰ったある日、3歳まで続いた子どもの夜泣きがピタッと止まったのです。私の不安定さを感じ取っていたんですよね。家を出て2日経ってから子どもに「じいじの家でご飯食べたり、ねんねするのもいいね」と言われました。その2週間後には「じいじの家とパパの家を行ったり来たりするのもいいんじゃない?」って言い始めて。そのまた2週間後になって初めて「パパに会いたいかもしれない」って子どもが言いました。母親である私の心の変化を見て、子どもも少しずつ変化してきた。本当に母親の精神状態って、子どもに影響するんだって実感しました。

母親がハッピーでないと子育てにも影響しますね。

竹下さん
講演で私はいつも「お父さんはお月様だ」って言っています。何かあった時に照らしてくれる人であってほしいなということで。でもお母さんは、家のなかを明るくする太陽でありたい。でも結局、太陽も月もないと回っていかないので。
横田さん
私がおススメしているのは「わざと家出」です。奥さんに出ていかれたことで男は「本当にやばい」ということに気づきます。そうしないと気づかない人もいるのです。
竹下さん
やっぱり、私のところに来る相談者の中には「わざと家出します」という方がおられますし、それを私もお勧めしています。女性は悩んでいる時に相談しにきます。「どうしたらいいと思いますか?」と。でも男性の場合は、結論が出ていることが多いです。「妻が出ていきました」。「妻に離婚すると言われています」。そこまで来てから、「どうしたらいいのか分からない」と相談しにくるのです。だから、男性の場合は、「2〜3日中にカウンセリングのスケジュールを取ってください」ということが多くて、女性の場合は、「この2週間以内に相談をお願いします」と言うことが多いです。同じ問題でも捉え方が男性と女性では全く違うのです。
横田さん
家出は、「わざと」なんですよ。女性にとっては「ここまで言っても分からないんだから」という時のテクニックのひとつ。本気で離婚を考えるようになってからでは遅いから、その前に「わざと家出」をするというのをやってみたらどう? と言うことがあります。

その反応で判断しましょうよということですね。

横田さん
練習試合のようなものです。
竹下さん
練習試合はかわいそうかな(笑)。それだけ、女性が本気というか「気づいてほしい」から家出もするのです。

まずは「話すこと」。コミュニケーションをとって、それでも伝わらない時は「わざと家出」。いなくなったら、どういう状態なのか「思い知ってもらう」というか。

横田さん
連絡も断って、最強なのは紙に1枚「あなたが家事に全く参加してくれないのでうんざりしました。私は家を出ます。探さないでください」と置き手紙だけ書き残す。携帯もつながらない。あんまりたくさん書いても意味ないです。シンプルな文面で。
竹下さん
大切なのは、「シンプルに」。伝えたいことを書くことですよね。

女性の社会進出とカジダン

女性が活躍することは、男性にとってもメリットがあるはずですよね?

横田さん
女性活躍は、家庭での活躍も含めていろいろあると思いますが、いずれにしても当然男性にもメリットはあります。例えば、社会の中で女性が活躍するというのであれば、まずは世帯収入が上がります。これまで一人の男性が健康を害してまで長時間労働で年収300万円を手にしているのであれば、俺が160万稼ぐから、あなたは150万稼いで来てと話し合って、夫婦で世帯年収を310万にすることもできるはずです。夫婦二人でどっちも働いて生き生きした方がいいです。女性は、外に出て働くことで、キラキラと輝くようになって、ストレスも少なくなる。主夫時代の僕もそうでしたけれども、家事を褒めてくれる人っていないんですよね。でも社会に出ればママたちも社会人として上司から褒められ、部下から素敵だと言われ、きれいですねと言われ、多くの人が「私」というものに注目してくれて、褒めてくれる。これを味わってしまったら、ずっと家の中にはいたくなくなると思います。
竹下さん
外に出ると、妻でもなくてママでもなくて、私になれるじゃないですか。そこが女性としては大きいと思います。国策的にも労働人口は増やさなければいけない。少子高齢化で人手不足なので働いてくれる女性が増えることは、いいことだと思うのです。

社会的にも、女性の社会進出、活躍が求められているわけです。

横田さん
お金だけじゃなくて、メリットは増えますよね。人とのつながり、コミュニケーションが図れるようになると、PTAなんかでの人とのつながりが活かせるし。もしかすると、夫婦二人で出来ることの幅も広がるんじゃないですか。

夫婦それぞれに社会との接点があれば、話題も広がります。

竹下さん
夫婦でも仕事のことが分かり合えるようになると思います。妻が、社会との接点が少ない場合、夫が「仕事がとても大変だった」と言ってもただ聞いてあげるしかできない。自分も仕事など、外との接点を持っていれば、自分の仕事の悩みも聞いてもらうし、今度はお互いの仕事の悩みも分かり合えるようになるから。
横田さん
男性で上司として部下を抱えているような立場だと、そういう相談は好きかもしれないですね。妻が仕事で困っていて相談してきたら、「それは長年の経験から言うとね」とアドバイスしてかっこいいところを見せたい。女性はアドバイスよりは、ただただ聞いてほしいのかもしれないけれども。
竹下さん
そうそう。女性はただただ聞いてもらいたいことの方が多いから。
横田さん
話を聞いてもらうことも大事だけれども、時には、男性を持ち上げるという意味でアドバイスもしてもらってほしい。「こういう時って、どうすればいいの?」って聞いてみたら、「それは、うちの職場にもある問題だけれども、ここはこうやって〜」と、ちょっとアドバイスしてみたい男心はありますから。やっぱりパートナーには、自分のことを認めてもらいたいのですよ。

「すごい」って言われたい。ヒーローになりたいという部分ですね。

横田さん
「やっぱりパパはすごいな」とか。「うちもパパみたいな上司だったら良かったのにな」とか。それで気分が良くなって、男性の方から「ママも仕事で疲れているだろうから、オレがメシを作るから」となるかもしれないですね。上機嫌になって。
竹下さん
いつまでも、男の人はヒーローでいたい。正義の味方・仮面ライダーでいたいのです。

カジダン、社会を変える?

竹下さんが起業したのは、自立に向けてだったのですか?

竹下さん
世間とのつながりがほしかったのです。専業主婦だった時は「私このままこれで終わっちゃうの?」っていう思いがあったのですよ。その頃、震災にあったりして、子どもにも私の働く姿を見せたくて起業しました。結婚して妊娠して退職するまでは、企業の結婚カウンセラーをしていました。不思議だったのが、入会者の4人に一人が離婚経験者で、ほとんどの人が「価値観とか、性格の不一致」を離婚理由にあげていました。産まれも育ちも違う人たちが結婚しているのだから価値観が違うのは当然です。でも、どうして離婚してしまうのだろう? と離婚に興味を持ち始めて、離婚カウンセラーの学校に通いました。専業主婦だった期間は2年くらいですね。

専業主婦になっても社会との接点は持ち続けていたいと思っていたのですね。

竹下さん
結婚当初のイメージとしては、子どもは二人産んで、小学校に上がるころにパートで仕事をしたいと思っていました。後になって「あなたの性格で家庭に収まるのはムリでしょ」と親には言われてしまいましたが。元夫は離婚する時、「こんなはずじゃなかった」と私を責めました。彼は、私がずっと専業主婦でいてくれると思っていたらしいのですよ。それも失敗したなと思いました。結婚する前にお互いのビジョンを、しっかり話しておけばよかったなって。時間が経てば、それぞれのビジョンは変化していくかもしれないけれども、お互いにちゃんと話し合うことは大事です。最近は、ラインでコミュニケーションしているというご夫婦もたくさんいますが、できれば、しっかり顔を合わせてお話ししていただきたいと思いますね。
横田さん
大事なのは、男性が、切れない。怒らないようにする。どっちかっていうと、女性の手の平の上で大騒ぎしているくらいがいいなと思います。女性が感情的になるのは、ホルモンバランスの影響もあります。これは当たり前のことなので、その特性をきちんと理解していないと、感情的になって語られたときに、その同じ土俵に男性ものってぶつかっていったらいけない。男性が冷静に「はい、わかったよ」と言っているくらいがちょうどいいと思うのです。男の人が家でもトップダウンみたいな指示をし出すと、女性の方は逃げたくなってしまう。
竹下さん
家族は会社じゃないので。企業ではなくチームですから。それは大事です。

対等な立場で、お互いの良さとか役割を活かしていくことが大事だと。

横田さん
父親が夕食時に家に帰ってきていて、子どもも一緒にいて、家族として家事とか育児をどうやっていく?とか、ゴールデンウイークどこに行く?とか。そういう何気ない会話も、黙って聞いている子どもの耳にも入っています。そういう時間の確保がまずは優先的だと思います。

そのためには社会が変わらないといけないわけですね。

横田さん
長時間労働を見直して、まず夫婦が同じステージに立つ機会を増やさないと。片手間で二人が将来のビジョンを語り合うことはできないですよ。顔を合わせる時間を設けて、直接話をするからこそ、伝わる気持ちがあるはずです。

その時間を確保するためには、男性の長時間労働を減らすと同時に、社会での女性の活躍も必要ということになってくるわけですね。

横田さん
そういうことです。同時だと思います。

カジダンが社会に与える影響力は大きなものなのかもしれません。

横田さん
社会を変えるというとすごく大事(おおごと)になってしまうので、一家庭一家庭がそうなっていけば、社会が変わっていくということになっていくわけですよね。

それぞれの家庭がやっていることが大きな動きになって、いつの間にか世の中全体が良くなっていくのであれば、みんな生きやすくなって活躍の場も広がるということですね。

息子をカジダンにするために

恋愛して、結婚して、子どもも育てて。男性も女性にとっても貴重な経験です。

横田さん
結婚して、親になるというのは幸せなことです。夫婦で、もっと、こうなってほしい、ああなってほしいとお互いに欲求とか要求が強くなりすぎるとバランスが崩れてしまいますが。そもそも自分以外の人と生活を共にする結婚というのは、ものすごく幸せなことです。日常生活の中で、常日頃からそれを感じ続けるのは難しいですが。

やりようによっては結婚はいいものだと思うから、竹下さんも入籍されるのでしょうか?

竹下さん
私は近々、再婚するのですが、離婚した時は、もう二度と結婚しないと思いました。「男性なんて信じられない」って。100%信じていたわけではないのですが、こんな思いをするんだったら、子どもと二人で生きていく方がずっといいと思っていました。今度の相手がその考え方を変えてくれたのか、私が考え方を変えたのか。子どもが考え方をかえてくれたのか分からないですが。ただ一つ言えるのは、子どもを生んだのはありがたい経験で、さらに子育てを一からできたっていうことは、毎日がメイクドラマで本当におもしろい。

さらに、母としてだけではなくて、自分の人生も輝かせたい。新しいパートナーとそれをどうやって実現しようと思っていますか?

竹下さん
それぞれの家庭でいい塩梅があると思うので、それを探っていければいいなと思っていて、もしかしたら私が父親としての役割を果たさなければならない時もあるかもしれないし、パートナーがお母さんの役割をしなくちゃならない時もあるかもしれない。子どもも大分大きくなってきて、逆に私の役割をやってくれることもあるのですよ。子どもは、美容院から帰ってきた時に、「ママ、かわいくなったね」って気づいて褒めてくれるのです。それを聞くと「よしっ!このまま育ってね!」と思います。それが、児童館のスタッフにも、「〜〜ちゃん髪の毛切ったでしょ?」とか、「〜〜ちゃん、今日はお口の色が違う」とか。今はうまくいっていると思います。
横田さん
竹下さんは、シングルマザーとして、かたくなになるような壁を作っていなかったのが良かったと思います。完全に開かれた子育てをしているから。ファザーリングの理事たちは、みんなが竹下さんの息子さんのパパのような存在です。いろんな人の価値観の人とコミュニケーションを経験しているので、人間的な幅の広さが出ている。だから何らかの人の変化に気づくのがすごい早いんだろうなと思う。おじいちゃんも一生懸命孫に関わっているし。
竹下さん
我が家のおじいちゃん、つまり私の父親はそれほどイクメンではありませんでした。「24時間戦えますか?」の企業戦士世代だから、イクメンという存在を理解できなかったみたいですが、今は「こんなに孫ってかわいいんだ」って気づいて、今のパパたちが「今日は子どもが具合悪いから、今日は仕事を休む」というのを耳にしたりすると、「そうか、大変だな」って言うようになりました。これからは、おじいちゃんもおばあちゃん世代も、みんなが変化していかなくちゃいけない。
横田さん
人が百年生きる時代に、定年退職後どうやって楽しく生きていくかということを考えていかなければならないのです。僕が東日本大震災で思ったのが「地域にこれだけ支えられていたんだ」ということです。地域って何かっていうと人なんですよね。その時の経験から、今僕は地域活動をやっています。消防団だったり、PTA活動だったり、できる限りのことをやっています。そうすると、会社の名刺の肩書きは一切無意味だということに気づくのですよ。地域には地域のルールがあって、消防団には消防団のルールがあって、職場以外のところに身を置くということは、仕事にもつながるし、その地域の歴史というものが分かりますし。仕事を辞めたら、地域で生きていくわけなので、そこに知っている人がいっぱいいたら、どれだけ生きやすいか。仕事を引退した後に、「はじめまして」と入っていっても、ちょっと居心地が悪いでしょう。長い人生をどうすれば豊かに生きていけるのかということを考えると、今のうちから、仕事以外の場所は作っておいた方がいい。

会社以外の居場所を若いうちから増やしていって、そうすると人生も100まで豊かになると。

横田さん
この間データで出ていたのは、2007年生まれの子どもは平均104歳まで生きるというデータが出ていましたね。
竹下さん
2060年の時点で平均寿命が女性が90歳、男性が86歳になっているんですよ。
横田さん
そのくらい長生きするのであれば、長い人生をどうすれば豊かに生きていけるのかということを考えると、今のうちからこういったきっかけでもいいし、なんのきっかけでもいいから、仕事以外の場所はすごく大事にしなければならないのです。

あわせて、自立して家事もできるカジダンにならなくちゃならないということですね。

横田さん
まさにカジダンは「生き方改革だ」と言っていますけれども、日本全体が、もう一回自分の生き方を見直していく時期に来ているんですよね。
竹下さん
仮に70歳まで仕事をして、残り100歳まで生きるとしたら30年間あるわけじゃないですか。30年間1日3回ご飯を食べるとしたら、膨大な数です。家事ができないと生きていけないのです。それをずっとサービスに頼って生きていくわけにもいかないですし。生きているからには、元気で楽しく生活したいと思うので、家事能力を今から高めていくにこしたことはないのです。

やっぱり、あらゆる男性に、カジダンになってもらわないと。

竹下さん
私たち親世代が、カジダンを育てるというのが一番大事ですね。今の社会の良くない仕組みを作ってしまったのは私たちだと思うのですよ。それを後世につなげていくのでは申し訳ないので、子どもたちの子どもたち、さらにその先の世代の子どもたちが生きやすく、生活しやすくするためには、今私たちができることはなにかということを考えながら子育てができればいいなと思います。お子さんがいない方も、カジダンの育成になんらかの形で関わっていただきたいですね。

横田智史×竹下小百合 スペシャル対談シリーズ